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2017年03月03日

脱Adobe?「Affinity Designer」の機能とワークフローを理解する

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Affinity Designer - プロフェッショナル向けのグラフィックデザインソフトウェア
https://affinity.serif.com/ja-jp/designer/


この記事では「Illustrator」と「Photoshop」それぞれの特長を扱えるグラフィックデザインツール「Affinity Designer(アフィニティデザイナー)」の特徴と実用性について解説します。

Affinity Designerの独特なコンセプトについて理解し、どのような用途・ワークフローに向いているのか、またFIreworksの後継足り得るのか、Sketch.appとの優劣について検討していますので、グラフィックデザインに関わる多くの方の参考になれば幸いです(^ω^)

■目次
  • Affinity Designer の概要
  • 「ペルソナ」とは何か
  • 既存デザインソフトとの比較など
  • Affinity Designerはこんな人にオススメ

◆ Affinity Designer の概要

「Affinity Designer」は、2014年10月にSerif Ltd,(英)がリリースしたグラフィックデザインソフトです。

・Windows/Mac両対応
・6000円買い切り、更新料なし
・記事執筆時点でバージョン1.5.4(2016/11/23リリース)
・Apple Design Award 2015 受賞
・オープンソースではない

一般に、Adobe Illustrator と Adobe Photoshopはそれぞれ「ベクター(ドロー)系ソフト」「ラスター(ペイント)系ソフト」と呼ばれます。描画の仕方において異なり、それぞれに得意分野を持ち合わせています。

ベクター(ドロー)系ソフト」は、パス(ベクターデータ)をつかって図を書きます。複数のアンカーポイントをつなぐベクター曲線によって描かれた線は、拡大しても画質が下がりません。図形や記号等のシンプルな幾何学オブジェクト主体のデザインを得意とします。
ちなみに<ベクター>とはベクトル、つまり矢印ってことですね。向きを持った点がたくさん連なったのがパスです。

一方「ラスター(ペイント)系ソフト」では拡大すると小さなドット(ピクセル)の集合となっていて、筆を塗り重ねるような絵やフォトレタッチにおいて真価を発揮します。
ちなみに、「絵師」と呼ばれるアニメ系イラストレーターらが使う「SAI」や「ClipStudio」のような国産ペイントソフトもこのラスター(ペイント)系に含まれます。
ベクターデータではなくビットマップデータ、つまりパスはなく色のついたピクセルでイメージが表現されます。

ベクター(ドロー)系とラスター(ペイント)系両方の操作が可能なソフトとしては、「Affinity Designer」の他には SketchFireworks が挙げられます。


◆「ペルソナ」とは何か

Affinity Designer 最大の特長は「ペルソナ」です。
この「ペルソナ」と呼ばれるモードのようなものを切り替えることで、いつでも「ベクター(ドロー)系ソフト」「ラスター(ペイント)系ソフト」のUIをスイッチできます。
1つのソフトウェア内でPhotoshop的な編集とIllustrator的な編集を行うことができるのです。

FireworksやSketchでは、シームレスに ベクター(ドロー)系 と ラスター(ペイント)系の処理を行うことが出来ましたが、Affinity Designerでは、UIを切り替えて行うことになります。


こちらが「Affinity Designer」のUIです。
ADのUI.jpg

パッと見たところ、Adobe製品のUIと似ているように感じられます。
まず違うなと感じるのは、
・リフレクトツールやパスファインダーの位置
・カラー選択がCorel Painterっぽい
・文字パネルが初期表示されていない(※ちゃんと存在します)
あたりでしょうか。

ワークフローの面で決定的に重要なのが、画面左上3つのモード切替ボタンです。
左から「描画ペルソナ」「ピクセルペルソナ」「ペルソナの書き出し」という3つモードに切り替えることができます。

「描画ペルソナ」は、Illustratorのようなベクター(ドロー)系モードです。
「ピクセルペルソナ」は、Photoshopのようなラスター(ペイント)系モードです。
それぞれのボタンをクリックすると、そのモードに切り替わるのですが、画面左側のツールが切り替わる以外、UIに大きな変化がありません。

描画ペルソナ
スクリーンショット 2017-03-03 17.58.01.png
→ コレが…こうなるぐらい →ピクセルペルソナ
スクリーンショット 2017-03-03 17.58.14.png


ペルソナを切り替えてもUI全体があまり変わらないので、直感的に「いま何のペルソナで作業しているか」が把握しにくいです。
言ってみれば、ソフトの最大の特徴が、最大の難点になっている気配もあります。
ただこのへんはバージョンを重ねるうちに簡単に解決されていくかもしれません(UIの背景色も一緒に変わる、など)。

ウィンドウ類のオンオフが、「表示メニュー」の「スタジオ」というところに奥まっているのも、最初のうちは少し迷います。

ルーラー、グリッド、ガイド、吸着といったあたりはAdobe製品を完全に踏襲しています。さらにそれぞれ「◯◯マネージャー」としてきめ細かい設定メニューが用意されています。


◆ 既存デザインソフトとの比較など

【描画ペルソナ】

・ツールの名前がAdobe製品とは微妙に異なり(イラレで言うダイレクト選択ツール=ノードツール等)慣れるまで少し大変。

・範囲選択はIllustoratorとは異なり、パス上をクリックするか、オブジェクト全てを囲わないとオブジェクトの選択ができない。PowerPointの選択操作に非常に近い。

・色のパネルはスウォッチ、カラースライダー、グラデーションなどから選べる。なかでもCorelDRAW製品のような「カラーホイール」が使いやすい。

・レイヤー効果やフォントは、メニュー上でマウスを重ねるだけで(選択しなくても)リアルタイムでプレビューされるので、作業効率がすごく高い

・ノードツールでパス上をクリックするとアンカーができる(ダイレクト選択ツール、アンカーの追加ツールが一緒)

・図形ツール:ツールバー上の「カーブに変換」で初めてパスの編集が可能になる。もどせない。

・図形ツールは、PowerPointなどのように沢山のプリセットがあり、それぞれパスを調整できる
スクリーンショット 2017-03-04 20.19.00.png

・スタイル/エフェクトのコピー&ペーストが可能


【ピクセルペルソナ】

・ビューの分割が可能(例:ピクセルビュー/アウトラインビュー)

・「焼き込みブラシツール」で焼き込みをペンで出来る

・ぼかしや描画を行うとベクターデータは自動的にラスタライズ(ビットマップ化)される

・ピクセルペルソナから描画ペルソナに戻っても、ラスタライズされたものはもどらない。


大まかな感想としては、機能の多くはIllustrator、Photoshopに劣らぬ操作感でした。
イラレ・フォトショに習熟している人なら、新しく操作を覚えることも少なく、とりあえず使い始めればすぐに慣れることができます。


◆ Affinity Designer はこんな人にオススメ

ベクター(ドロー)系とラスター(ペイント)系、2つのペルソナが用意されており、しかもそれをわざわざ「切り替える」というワークフローで、実際どのようにグラフィックデザインを行うことが出来るでしょうか。

【1】ベクター(ドロー)系でベースを作って、ラスター(ペイント)系で仕上げる
まず使っているうちに感じたのは、ペルソナを「頻繁に切り替える」ことにはあまり意味が無いのではないか、ということです。
このような考え方は、一度ラスタライズしたベクターデータは、ペルソナを切り替えてももとに戻らない、という事実からも自然な発想です。
何度もペルソナを行き来するよりもむしろ(1)ベクター系でベースを作って(2)ドロー系で仕上げる、というワークフローにAffinity Designerというソフトのメリットがあると言えます。

グラフィックデザインのワークフロー
(1)まず、ベクター(ドロー)系の「描画ペルソナ」で、線や図形を主体にした作画とレイアウトを行います。
(2)そして、ラスター(ペイント)系の「ピクセルペルソナ」で、効果などを適用したり、オブジェクトを細かにレタッチします。

これは、どちらかというと、一枚のポスター画やコンセプトビジュアルを仕上げる意味での「グラフィックデザイン」のワークフローだと言えます。

つまりイラストレーターさんや「絵師」と呼ばれる人たちも、Affinity Designerの試してみる価値はあります


【2】Sketchよりもビットマップ編集に強い、Fireworksの後継

一方、同じ「グラフィックデザイン」でも、ウェブやスマホアプリなど特定デバイス向けの「UIデザイン」の場合はどうでしょうか。

シームレスにベクター系とドロー系の作業を織り交ぜたデザインを行うなら、従来は「Adobe Fireworks」が最適でした。
しかしながらFireworksは、2012年の更新を最後に今やAdobeのサポート対象外で、ライセンスも入手不可能です(体験版はダウンロードできます)。

Fireworksの後継として名が挙がる「Sketch(Sketch.app)」は、ラピッドプロトタイピングを前提としたベクター系作業と書き出しの面では圧倒的に優れています(自動でサイズ合わせしてくれるスライスや、2x/3xに対応した書き出し機能など)。
ですが、ビットマップ編集は非常に非力です。範囲選択は矩形だけで、自動選択ツールは閾値の設定すらできません。

そういう意味で、シームレスではないものの、
・Sketchよりは劣るけれどもIllustrator程度にはウェブデザインに使えるベクター系機能
・Sketchよりもそこそこ強力なビットマップ編集機能(ラスター系機能)
を併せ持った、FIreworksの後継ソフトとしてAffinity Designerを使い倒すことも出来ます。

この場合、描画ペルソナを中心に、ビットマップをいじりたいときに何度かピクセルペルソナに切り替える、というようなワークフローになると思います。

シームレスでないのはたしかに面倒ですが、PhotoshopとIllustratorを切り替えるよりは随分マシでしょう。

「Sketch」は今まで買い切り方式で販売されていましたが、次期バージョン(4)からはAdobe CCのような年額サブスクリプション方式に切り替えると発表されています。
(サブスクリプションなしでも使えるが、アップデートを全く適用できない)

一方この「Affinity Designer」はサブスクリプションのない買い切りソフトです。
また、Mac版しかリリースされていないSketch.app に対し、WIndows版もリリースされています
※非公式には「Lunacy」というWindows向けSketch互換ソフトがありますが、まだ少しバギー(buggy)なようです。

Webデザインでの実用という意味では、書き出しの際に選べるPNGのなかになぜか32bitPNGがないなど、気になる点もありますが、充分に即戦力になるソフトであることは間違いありません。

ですので、
・FIreworksの後継を探しているウェブデザイナー
・Sketch.appでちょっと不満を感じているウェブデザイナー
・PSやILを使っているけれども、Adobe XDやSketchが気になっているウェブデザイナー
も、「Affinity Designer」を一度検討してみてはいかがでしょうか。

10日間無料体験することもできますし、万一気に入ってしまっても(^-^)、比較的安価なので問題ないと思います。

スクリーンショット 2017-03-04 20.21.17.png
Affinity Designer - プロフェッショナル向けのグラフィックデザインソフトウェア
https://affinity.serif.com/ja-jp/designer/


Affinity Designer Japan Wiki
Affinity Designer - Wikipedia


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posted by taichistereo at 16:52 | Comment(3) | 開発環境・技術選定
こんにちは。

Affinity Designerの使い方を検索していてたどりつきました。

ベクター系ツールとドロー系ツールというのは通常同じ意味で、グラフィックソフトウェアを分類するなら、ベクター(ドロー)系ツールとラスター(ペイント)系ツールではないでしょうか?

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%89%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%82%BD%E3%83%95%E3%83%88

ご指摘のように、Affinity Designer自体がわかりにくいところがあるので、この記事を読んだ方がますます混乱するのではないかと思いましてコメントさせていただきました。

Posted by ともちゃん at 2018年03月31日 23:54


>ともちゃんさん
ありがとうございます。
おっしゃる通り記述が間違っていました!
今更ですが記事を修正しました。
コメントいただいていたのに業務の都合で長い期間対応ができずすみませんでした。
Posted by taichistereo at 2019年05月30日 17:34
・範囲選択はIllustoratorとは異なり、パス上をクリックするか、オブジェクト全てを囲わないとオブジェクトの選択ができない。PowerPointの選択操作に非常に近い。


設定でイラレと同じような操作に変えれますよ
Posted by うい at 2020年08月26日 12:02
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